更新日2000年5月21日
北海道民さんのおすすめ作品コーナー
技来静也
拳闘暗黒伝セスタス (現在4巻まで) 2000年2月4日投稿
「ベルセルク」で有名なヤングアニマルに掲載されてます。
絵は非常に「ベルセルク」に似てます(昔アシスタントだったらしい)が、内容は全く違います。
向こうがファンタジーなら、こちらは古代ローマが舞台です。
己の拳で戦うことしか許されていない少年拳奴セスタスは、同年代の皇帝ネロやローマの黄金の鷹と
誉れ高い少年格闘士ルスカとの交流の中で、漠然とした「自由への解放」を夢見る。しかし、時代の
奔流はセスタスも、ネロもルスカも容赦なく飲み込み、互いの人間関係は望まざる方向へと歪み・・・と、
かなり重厚な展開が展開されます。
見所は、やはり一癖二癖ある登場人物たち。特に、ルスカとその親父のデミトリアスの存在は大きいです。
デミトリアスは、恐らく「グラップラー刃牙」のオーガとタメを張る強さです。
3巻からの展開は本当に息をつかせないもので、ぜひ一読してほしいものです。
由起賢二
野望の王国 (全28巻) 2000年2月4日投稿
オススメしといてなんですが、この作品はすでに絶版になってます。僕も、入手するまではかなり
苦労したものです。
原作は「美味しんぼ」で有名な雁屋哲先生。しかし、この作品はそんなグルメウンチク漫画など、
遠く因果地平に飛ばすパワーを持つ、スーパーバイオレンスな作品です。
同人誌などでよくコラージュされていたりするので、意外に知ってる人は多いかもしれません。
その濃すぎる絵は、拒否反応を示す人も多いと思いますが、それで敬遠するのは惜しい作品であります。
「この世は荒野だ! 唯一野望を実行に移す者のみが、荒野を制することができるのだ!」
「警察機構こそが、日本で最大の暴力機構なのだ! 分かったか、下郎!」
「夢を捨て、野望を捨てて男は生きていけるのか!」
・・・名台詞を挙げれば限のないこの作品。機会があったら、どうぞ。
青山宏美
ダイヤモンド (全8巻) 2000年5月19日投稿
締め切りに追われる運命の「漫画」というジャンルは、筆者の伝えたいことを一から十まで
すべてを詰め込むのが難しいと思います。しかし、それを成し遂げてしまう人間はいますし、
そういう才能はやはり評価されるべきだと思います。
この「ダイヤモンド」は、ビッグコミックスピリッツで連載されていた、「プロ野球」を
題材とした漫画です。
主人公「種田」は気の弱いチンピラで、運命の悪戯からある暴力団の組長を殺してしまい、
刑務所の中で刺客に怯える暮らしをしていました。しかし、運命は彼を外の世界へと導きました。
プロ野球界で現在最も期待されている若きスラッガー、「童子」は、しつこく絡んできたホーム
レスを誤って殺してしまいました。無論、正当防衛は成り立つのですが、名誉が失墜することを怖
れた球団側は、顔に大きな傷が出来てしまった童子の代わりに、彼にうり二つの容姿を持つ種田を
替え玉とする計画に出たのです。
「僕がバッターボックスに立つのはホームランを打つためじゃない。昨日までの自分を越え、新し
い可能性に挑戦するんだ。このバットで夢を打ち上げるんだ」
血豆だらけの掌を武器に、努力でここまで登り詰めた童子の姿に、種田は「もしかしたら自分も
・・・」と、替え玉に承諾します。
しかし、所詮種田はずぶの素人(チンピラ故に、ほとんど未経験)。まあ、一般には「スランプ」
と言うことにして、顔見せ程度にしておけば・・・と、周囲は考えていた。だが、種田はむしろ童子
以上の実力を発揮し始めます。「プロ野球選手」という地位と名誉を手に入れるためにスレてしまっ
た周囲には、種田の純粋な「野球は楽しい」という態度に苛つきながら、同時に強烈に惹かれていき
ます。
黙っていられないのは童子本人です。影武者に自分の地位が脅かされる・・・否、むしろ種田の才
能に最も早く気づいたのが彼だったからこそ、よけいに焦りは募ります。彼は秘密裏にロシアへ渡っ
て半年間トレーニングに励み、徹底的に鍛えて帰国して、種田に勝負を挑みます。
時はオールスターの第一戦。種田はその頃にはすでに童子以上の存在となりつつありました。一打
席ごとに交代して打席に入る、という勝負の行く末はいかに・・・?
現実のプロ野球も、我々は選手たちが「夢」のためではなく、「金」と「名誉」のために日々努力
しているのを知っています。「結果」が全てであり、「数字」で査定されていることを知っています。
そんな集団の中に、そんな常識を知らないチンピラが飛び込み、八面六臂の活躍をするのは非常に
胸のすく思いがします。さらに、そんな「職業選手」たちの中にくすぶっている「野球への純粋な思
い」が種田によって呼び起こされる様は、かなり身近に共感できる部分も多いです。
そして、最終回。「野球が好きだ」という思いと、「自分らしく生きる」ことを強烈に印象づける
展開は、本当に「思いの丈を全て出し尽くした」という筆者の言葉が聞こえてきそうです(いや、ま
だまだだった、というかもしれませんが)。
単行本がなかなか無いのですが(僕はかなり必死になって探しました)機会があったら呼んでみて
ください。僕はプロ野球が嫌いな人間なんですが、それでも薦めたい作品です。
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